【百名山筑波山】日帰りで楽しむ。筑波山神社と二つの山頂を巡る旅

2026.03.15
「今週末はどこに登ろうか」——。 山好きなら誰もが悩む金曜日の夜。
本当は標高2,000m級の冬山も頭をよぎりましたが、
この時期の標高が高い山はまだガチガチの凍結。
おまけに自分の体調も万全とは言えず、「無理は禁物」と自分に言い聞かせます。
とはいえ、せっかくの休日を家で過ごすのももったいない。
そんな時、ふと浮かんだのが茨城の名峰・筑波山でした。
「日帰りで行けて、公共交通機関でのアクセスも抜群。
こんな機会でもなければ、
じっくり電車とバスを乗り継いで筑波山に向かうこともないかもしれない。」
そんな、少し肩の力を抜いたきっかけで始まった今回の山行。
結果として、歴史ある神社の空気感と想像以上の絶景に癒やされる一日となりました。
まず目に飛び込んでくるのは、どっしりと構えた立派な拝殿です。

歴史を感じさせる風格ある木造建築に、並べられた酒樽。
体調が万全ではないこともあり、
「今日は無理せず、無事に山歩きを楽しめますように」と、
いつも以上に丁寧に手を合わせました。
本格的な登山口はこの神社の脇から。
静かな境内で心を整えてから一歩を踏み出す。
これこそ、日本古来の信仰の山である筑波山ならではの
贅沢なスタートの切り方かもしれません。
筑波山神社の脇、御幸ヶ原(みゆきがはら)コースの
登山口となる石鳥居をくぐったのは8時50分過ぎのこと。

ここから山頂の手前にある広場「御幸ヶ原」までは、ケーブルカー沿いを登るルートです。
「初心者向け」という言葉を鵜呑みにして、密かに「目標45分!」と
心の中でタイムを掲げていました。体調がイマイチとはいえ、
高尾山くらいのイメージでいたのかもしれません。
……しかし、その甘い考えはすぐに打ち砕かれます。
鳥居を抜けた直後から、目の前には怒涛の木階段と段差の大きな石段が続きます。
「思った以上に急勾配が続く……」 段差は想像以上にハードでした。
予定通り50分を要して、ようやく御幸ヶ原に到着。
汗だくになりながらも、まずは最初の関門を突破した達成感がありました。
息を切らしながら登り詰めると、それまでの樹林帯が嘘のように消え、
目の前がぱっと開けました。標高約800m地点にある広場、
御幸ヶ原(みゆきがはら)に到着です。
まず迎えてくれるのは、

このスタイリッシュな「Mt. Tsukuba」のモニュメント。
ここが男体山(左へ0.3km)と女体山(右へ0.6km)の分岐点になります。
そこには圧倒的な関東平野の大パノラマが広がっていました。
遠くにはうっすらと山影が見え、遮るもののない空の青さが目に染みます。
最高のご褒美です。
御幸ヶ原での休憩で体力を回復させ、まずは向かって左手、
男体山(なんたいさん)の山頂を目指します。
御幸ヶ原からは約5分ほどの道のりです。

御幸ヶ原から見えた関東平野の絶景とはまた違う、北側の眺望。
地平線の彼方に、白く雪を被った山々が連なっているのがはっきりと見えました。

方向からして、おそらく東北地方の山々。
男体山頂からの雪景色を堪能した後、再び急坂を慎重に下り、
御幸ヶ原へと戻ってきました。
今朝は早起きで体調もイマイチだったため、朝食は軽めに済ませていました。
ここにきて急に、「朝食と昼食を兼ねたしっかりとした食事」を胃袋が要求し始めます。
御幸ヶ原には魅力的な茶屋が軒を連ねていますが、私の目は一つの看板に釘付けになりました。

「けんちんうどん」

茨城の郷土料理としても知られる、具だくさんの汁物です。
山頂付近は風が強く、体がすっかり冷え切っていたので、迷わ注文
待つこと15分運ばれてきたのは、湯気の立つ熱々のけんちんうどん。
大根、人参、ごぼう、そしてお肉。ゴロゴロとした具材がこれでもかと入っています。
まずは汁を一口。 根菜の旨味が溶け出した優しいお出汁が、
冷えた体と、急登で疲れた筋肉に染み渡ります。
「ああ、生き返るー」
箸が進むにつれ、体の中からポカポカと温まっていくのが分かります。
体調が万全ではない時こそ、こうした温かくて栄養のある食事が、何よりの薬になりますね。
お腹も心も満たされ、完全復活! これで最後の関門、
最高地点の女体山頂へ向かう準備が整いました。
けんちんうどんで完全復活を遂げ、いよいよ今回の山行のフィナーレ、

筑波山の最高地点である女体山(にょたいさん)の山頂を目指します。
御幸ヶ原からは急な岩場の登りが約10分ほど続きますが、
お腹が満たされた今の私には、足取りも軽やかです。
巨大な岩がゴロゴロと積み重なった山頂に到着すると、
そこには「日本百名山 筑波山」の石碑が凛と立っていました。

男体山よりもさらに10m高い、標高877m。これにて、双耳峰の登頂完了です!
この女体山頂、男体山に比べて岩場が露出しており、視界を遮るものが一切ありません。

そして、岩場の端に立った瞬間、目の前の光景に思わず息を呑みました。
「……めっちゃ絵になる!」
足元から一気に広がる関東平野の大パノラマ。
そして頭上には、澄み切った青空に、まるで筆で描いたような白い雲が印象的にたなびいています。

岩場のダイナミックさ、空の広さ、そして雲の表情。すべてが完璧な構図で収まるこの場所に、
ただただ圧倒されました。
女体山頂から見渡す関東平野。パッチワークのように広がる田畑と街並みの向こう、
地平線の境界線あたりに、真っ白に雪を被った富士山がくっきりと見えました。
「2000m級の雪山は、また今度。今日はここで正解だったんだ」
女体山頂での絶景を満喫した後は、白雲橋(しらくもばし)コースを使って下山します。
登りの御幸ヶ原コースはひたすら階段でしたが、
こちらは打って変わって、巨大な岩や不思議な形をした石が次々と現れる、
まるで天然のアスレチックのようなルート。
「下山は、まさに奇跡の連続でした。」

弁慶をも後ずさりさせた「弁慶七戻り」や、自然の造形美に圧倒される巨岩たち。

それらを潜り抜け、静かな森の空気を感じながら下っていく時間は、
登りとはまた違った格別なひとときでした。

ふと視界が開けると、そこには穏やかな午後の光に照らされた景色が広がっていました。
山頂で見たダイナミックなパノラマも素晴らしいですが、
こうして里山へと戻っていく安心感も登山の魅力の一つですね。

そして11時45分、ついにスタート地点の大きな赤い鳥居まで戻ってきました!

時計を見ると、歩き始めてからちょうど3時間弱。
体調と相談しながらのスタートでしたが、蓋を開けてみれば、
東北の雪山から関東平野の富士山、そして神秘的な岩巡りまで、
驚くほど多くの「奇跡」に出会えた山行となりました。
最後は筑波山神社の拝殿に、無事に下山できた感謝を伝えて。
心地よい疲労感とともに、私の筑波山「リカバリー登山」はこれにて完結です。
冬の2,000m級を断念し、体調と相談して選んだ筑波山でしたが、
結果として心身ともに満たされる最高の山行となりました。
最後まで読んで頂きありがとうございました!




