那須岳を完全制覇!茶臼・朝日・三本槍岳を巡る1,500mUPの周回チャレンジ

「百名山チャレンジ14座目。

今回は那須岳の主要三山をすべて繋ぐ周回ルート。

20km、1,500m超の登りに挑んだ、走りごたえ十分の1日をレポートします。

【山行サマリー】

  • 活動日: 2026年4月25日
  • ルート: 峠の茶屋 ~ 朝日岳 ~ 三本槍岳 ~ 大峠 ~ 三斗小屋温泉 ~ 牛ヶ首 ~ 茶臼岳 ~ 峠の茶屋
  • ハイライト: 那須最高峰・三本槍岳での同郷の方との一期一会。
    • 裏那須エリアでの「熊」への緊張感と、スピーカーによる音楽作戦。
    • 雪解けの沢での「ドボン」と、残雪期のルートロストからのリカバリー。
    • ゴール後の峠の茶屋「きのこ汁」と、名湯「鹿の湯」での完全リフレッシュ。
Screenshot

那須三山を駆ける:朝日岳から最高峰へ

【AM 4:50 スタートの号砲】

那須ロープウェイ山麓駅の少し先、峠の茶屋駐車場。 

車の外に出ると、肌を刺すような冷たい空気(車の温度計は(0度)と、

言葉を失うほどの朝焼けが待っていました。

4時50分。まだ多くの人が眠りの中にいる時間、

私はヘッドライトをつけトレイルへと踏み出します。

東の空が真っ赤に染まり、太陽が顔を出す瞬間、これからの20km、

1,500mUPというタフな周回チャレンジへの覚悟が決まりました。

登山口から少し進むと、さらにドラマチックな景色が待っていました。

背後から差し込む朝日が、荒々しい岩道をオレンジ色に染め上げていきます。

自分の影が遥か先まで伸び、まるで「もっと先へ行こう」と導いてくれているかのよう。

避難小屋が視界に入り始めたころ、目の前に現れたのは予想以上の残雪でした。

事前の情報では「チェーンスパイク不要」とのことでしたが、実際に目の当たりにすると、

早朝の冷え込みも相まって一瞬足元への不安がよぎります。

しかし、ここが腕の見せ所。雪の踏み跡を慎重に選びながら進みます。 標高が上がるにつれ、

春の訪れと冬の名残が共存する那須岳の厳しさを改めて実感。

不安をスパイスに変えて、いよいよ本格的な稜線へと足を進めました。

足元の雪を慎重にクリアし、視界を上げるとそこには絶景が広がっていました。

谷の向こうから昇る太陽が、複雑に流れる雲を裏側から照らし出し、

刻一刻と空の色を変えていきます。遠くに見える街並みが、自分が今立っている場所の高さと、

ここまで登ってきた充実感を教えてくれます。

4時50分に駐車場を駆け出してからわずか50分。

AM5時40分、最初のピークである朝日岳の頂に立ちました。

まだ街が動き出す前の静かな時間。山頂標識の向こうには、

澄み渡った「那須ブルー」の空と、これから挑む三本槍岳へと

続く雄大な稜線がくっきりと浮かび上がっています。

500m以上の標高を一気に駆け上がった身体に、冷たくも心地よい山頂の風が吹き抜けます。

この時間、この場所に立っているのは自分だけ。

360度の絶景を独り占めする贅沢を味わいながら、

次なる目的地へと再び走り出します。

朝日岳を後にし、次なる目的地・最高峰の三本槍岳へと向かいます。

隠居倉への分岐点を通過する頃には、さらに視界が開け、

まるで空の上を走っているような感覚に。正面にどっしりと構える三本槍岳の山容が、

一歩ごとにその迫力を増していきます。

荒々しい岩場から、少しずつハイマツの緑や白い残雪が混じる柔らかな景色へ。

変化に富んだトレイルを楽しみながら、最高峰へのビクトリーロードを駆け抜けます。

この開放感こそ、那須岳周回の醍醐味です!

三本槍岳への道中は、まさに天然のアトラクション。

視界が開けた場所では、整備された木道がどこまでも続いています。

空に向かって真っ直ぐ伸びる道を駆け抜ける爽快感は格別!

「これぞトレイルラン!」と叫びたくなるような心地よさです。

しかし、一歩樹林帯に入れば景色は一変。場所によってはまだ深い雪が道を覆い、

ブッシュを掻き分けながら進むアドベンチャーな展開に。

「歩きやすい!」と喜んだ直後の「おっと、雪だ!」というギャップ。

この変化が楽しくて、自然と笑みがこぼれます。一筋縄ではいかないからこそ、

最高峰への道のりがさらに愛おしく感じられました。

雪のトンネルを抜け、ついにたどり着いたのは標高1,917m、

那須連山の最高峰・三本槍岳です。

時計を見ると、まだ6時25分。澄み切った空気の中、

目の前には360度の大パノラマが広がっています。

先客が一人いらっしゃったので挨拶を交わすと、

驚きの事実が。なんと、その方も私と同じ神奈川県ご出身だったのです!

「まさかこんな北の頂で、同郷の方に会えるとは……」

遠く離れた異境の地、しかも早朝の山頂。偶然が引き寄せた不思議な縁に、

心が温かくなりました。地元の話を少し交わしながら眺める絶景は、

いつも以上に感慨深く、最高の思い出となりました。

裏那須の深淵:熊の気配と音楽の盾

三本槍岳を後にし、「大峠」へと一気に駆け下ります。

ここまでは順調そのもの、絶景を楽しみながらのトレイル。

しかし、ここからが今回の山行の真の「本番」でした。

目指すは三斗小屋温泉。

一歩足を踏み入れると、それまでの明るい稜線とは打って変わり、

深い森と沢の音が響く別世界。何より怖いのが「熊」の気配です。

大峠からはここはこれまでの華やかな稜線とは180度違う、

濃密な緑が支配するエリアです。

漂うのは、明らかに「野生」の空気。

熊鈴の音だけでは吸い込まれてしまいそうな静寂の中、

私は持参したスピーカーを最大音量でオンにしました。

鳴り響く音楽。それが唯一、自分が文明の世界と繋がっている証のように感じられます。

3度の沢渡り、慎重に足場を選んでいたつもりでしたが……

ついにその時がやってきました。

「ドボンッ!」

苔で滑ってしまい 一瞬の油断で片足が冷たい沢水の中へ。

4月末の雪解け水は、想像を絶する冷たさ!

心臓が跳ね上がるような衝撃が走り、一気に目が覚めました。

「うわ、冷たっ!」と独り言を叫びながら、

慌てて立て直し。幸い怪我はありませんでしたが、

シューズの中はぐっしょり。

でも、不思議とそこからは吹っ切れました。

「もう濡れちゃったし、あとは進むだけだ!」と、

大音量の音楽に乗せてペースアップ。

この冷たさも、裏那須がくれた手厳しい、

でも忘れられない「お土産」です。

迷宮の雪山:ルートロストと癒やしの山小屋

沢を越え、再び現れた雪の斜面。 本能的に「雪の上の方が進行方向だと」

と感じ、道はこっちだ!と信じてひたすら上を目指しました。

しかし、登れば登るほど周囲のブッシュが濃くなり、

あるはずの踏み跡が消えていきます。

「……道がない。」

嫌な予感がして慌ててYAMAPを確認すると、

位置を示す矢印は正規ルートを大きく外れていました。

「やってしまった!」という焦燥感。

慌てて来た道を戻りますが、一度ロストした場所から復帰は

精神的にも肉体的にも想像以上にキツい。

必死こいて急斜面を降り、正規ルートに戻った頃には、

残しておきたかった体力を根こそぎ奪われていました。

改めて、残雪期のルート判断の難しさと、GPSの重要性を痛感。

重くなった脚を叩き、再び前を向きます。

沢でドボンし、雪の急斜面でコースを外れ、ボロボロになりながら

必死の思いで歩みを進めること数十分。

8時7分、深い森の先に突如として大きな建物が現れました。

ここが、歩いてしか辿り着けない秘湯中の秘湯、三斗小屋温泉です。

熊への恐怖とルートロストの焦燥感から解放され、

文明の気配に触れた瞬間の安堵感といったらありません。

ようやく訪れた休息の時間。

本日の昼飯(まだ朝のようですが、体感はもうお昼!)は、

ザックに忍ばせていた焼きそばパン

必死こいて登り返した後の、この濃いめのソース味。

冷え切った体にエネルギーが染み渡ります。

山奥のひっそりとした空気の中で食べるパンは、贅沢に感じられました。

20分の短い休息を終え、お世話になった山小屋を後にします。

次の目標地点は牛ヶ首。

ここからは再び標高を上げていく登り返しが始まります。

表側の明るい稜線とは違い、裏那須のこのあたりは依然として厚い雪に覆われています。

先ほど道を失いかけた経験が頭をよぎり、期待よりも「無事にルートを見極められるか」

という不安が心をかすめます。

雪に隠れた段差や、滑りやすい斜面。一歩ごとに足元の感触を確かめ、

地図を頻繁にチェックしながら、静まり返った雪の森を黙々と進みます。

活火山の息吹:茶臼岳登頂ときのこ汁の味

辿り着いたのは、ひょうたん池周辺の広大なエリア。

先ほどまでの「道を失うかもしれない」という不安や、

ドボンした足の冷たさ、削り取られた体力……そのすべてを包み込んでくれるような、

広くてきれいな景色が広がっていました。

目の前にそびえるのは、那須の象徴・茶臼岳。青空との境界線がくっきりと見え、

ここが那須連山の核心部であることを再認識させてくれます。

この開放感、そして風の音しか聞こえない贅沢な静寂。

厳しい裏那須を突破した者だけが受け取れる、最高のご褒美を心ゆくまで堪能しました。

この看板を目にして、改めてここが厳しい自然の真っただ中であることを痛感します。

美しい景色に心を奪われそうになりますが、

野生の領域にお邪魔しているという謙虚さと警戒心は、

最後まで捨ててはいけません。

絶景と隣り合わせの緊張感。

それもまた、那須連山が持つ「本物の山」としての魅力なのかもしれません。

ひょうたん池を過ぎ、茶臼岳の斜面に取り付くと、景色は劇的な変化を遂げました。

これまでの穏やかな湿原や深い森はどこへやら、

目の前に広がるのは荒れ果てた岩石の山道。

一歩踏み出すごとにガラガラと音を立てる浮石、

そして植物を寄せ付けない厳しい火山礫の斜面が続きます。

そして何より圧倒されるのは、大地の「息吹」です。

岩の隙間から立ち昇る白い噴煙と、鼻を突く硫黄の香り。

今まさにこの足の下で地球が鼓動していることを確信させるその光景に、

自然への畏怖の念が湧き上がります。

荒涼としていながらも、どこか神々しささえ感じるこの火山の風景。

裏那須の試練を越えてきた体に、この力強い大地のエネルギーが最後の活力を与えてくれるようでした。

最後の急登を黙々と踏み締め、

午前10時10分、ついに茶臼岳の山頂に立ちました!

朝日に照らされた朝日岳から始まり、同郷の方と出会った最高峰・三本槍岳、

そして熊への恐怖と戦いながら突破した裏那須の深い森……。

ここまで歩んできたすべての道が、この山頂に繋がっていました。

山頂から見下ろす景色は、これまでの苦労をすべて

「最高の思い出」に塗り替えてくれるほどの絶景。荒々しい岩肌の先には、

先ほどまでいた稜線が遥か遠くに見え、

自分の足でここまで戻ってきたという確かな手応えを感じます。

削られた体力、濡れたシューズ。そのすべてが、この周回をやり遂げた証。

風に吹かれながら、完走の喜びを深く噛み締めました。

茶臼岳から一気に駆け下り、午前11時7分、ついにスタート地点の峠の茶屋へ帰還しました!

ゴールの自分を待っていたのは、茶屋のきのこ汁です。

湯気と共に立ち昇るきのこの香りが、緊張し続けていた心をやさしく解きほぐしてくれます。

一口啜れば、滋味深い出汁の温かさが、

そして出し切った全身の細胞に染み渡っていく……。

苦労したからこそ、この一杯が格別に美味い。 「やっぱり山は、最高だ!」

ゴールのご褒美はきのこ汁だけではありませんでした。

茶屋の方から「ここへ来たならぜひ」と勧められたのが、

那須が誇る名湯中の名湯、「鹿の湯」です。

趣のある木造の建物に足を踏み入れると、鼻をくすぐる濃厚な硫黄の香り。

ここは温度の異なる湯船が並び、自分に合った熱さを選んで浸かる伝統的なスタイルです。

心身ともに完全復活。

厳しい自然と戦った一日の最後に、那須の歴史と温もりに包まれる、完璧なフィナーレとなりました。

最後まで読んで頂きありがとうございました!!